盆栽って? 〜好きを仕事にする13
性がいい?
盆栽で時々聞くと思う『性がいい』ってどういうこと?と初め思いますよね。
その樹の性質、特性、ポテンシャルを意味しています。じゃあ、ぜひ性がいいものが欲しい!となるのですが、これは各自が目標としている盆栽の姿で話が変わります。
まずミニ盆栽、小品盆栽に適した性質と大品では違います。ミニ盆栽では葉が小さく間延びせず、よく芽がかかると作りやすいです。例えば黒松でも、三河黒松が適しています。真柏も糸魚川が作りやすいです。八房〜や姫〜という樹種名は葉が小さいのでミニ盆栽向きです。これらの樹種で大品を作ろうとすると凄い年数がかかったりします。
あと目指す樹形によっても違いがあります。
ケヤキで綺麗な箒作りを目指す場合は、苗の時にすでに真っ直ぐ、バランス良く枝が出ていると作りやすいです。
でもそうではなくても、その樹に合った作り方をしてあげればいいと私は思います。絶対、本に載ってるような樹形じゃなきゃヤダ!という場合を除けば、年数を重ねるごとに味わいがでてきますし、色々な樹形があってこそ盆栽は楽しいのではと思います。
いつまでも頭柔らかくポジティブに盆栽を楽しんでいきたいですね。
盆栽って? 〜好きを仕事にする12
本に書いてある事
たまに本と実際のお手入れが違う、という話を聞きます。こうなると初心者の方は混乱しますよね。
なぜかというと、本に書いてあることは基本であることは間違いなくて、『樹が元気であること』を前提でお手入れを説明しています。
実際はどうかと言うと、少し弱っているのもあれば、元気が溢れてる時、樹の一部分だけが弱ってる時、もう瀕死の時など色々な状態があります。また樹齢によっても違うし、育てている環境によっても違ってきます。東北と関西じゃ全然気候が違いますよね。
本にはそこまで書けないのです。
だから地域の愛好会や盆栽園での研究が重要になります。
本と実際は違ってもおかしくないことを知っておいてください。
盆栽って? 〜好きを仕事にする11
皐月(さつき)の季節です。
この時期は皐月盆栽が美しく開花し、開花直後のお手入れが始まるという皐月業界にとって忙しく大切な時期です。
なんで、皐月だけ専門店が多いの?と若い方は不思議かもですね。皐月は昭和の時代に一世風靡したのです。盆栽ってよく分からない人でも皐月を愛で、飛ぶように売れまくった素晴らしい時代でした。お店の数ももっともっと多く、愛好家さん達は鹿沼までバスツアーに行き、原木を買い漁りました。めっちゃ楽しかったでしょうね。
人気の理由は花の美しさだけでなく、作りやすさもあります。とにかく芽吹きがいいです。元気さえあればどこからでも芽がふきます。だから多くの人が原木から立派な完成木に育て上げることができ愛されました。
私は20年ほど前に盆栽を皐月からスタートしました。その頃はもうブームは落ち着いて、50代ぐらいの方が中心に愛好会を盛り上げていました。皐月の展示会は開花時期5月に多く、大きい公園とか神社とかでよく開催されています。私が参加していた会は大阪吹田の万博公演(太陽の塔があるとこ)の日本庭園側で開花時期と秋に展示会してました。今は違うとこでしてます。
なんでブームが終わったのか?
ひとつに松などの盆栽と大きく違う点があります。皐月には寿命があることです。
国風に出ているような古い品種、大盃、日光などは強健で良いのですが、新しい品種は30ー40年ほどで頭から焼け始めるのです。弱り始めたら治すことがとても困難なことは盆栽家には辛いことでした。私は今は皐月の勉強していないので、専門家の中では良いお手入れ方法が見つかっているかもですね。
この問題で皐月から他の盆栽に移行した方は多かったし、皐月を続けている方も枯れるのは仕方ないと割り切った考えをよく聞きました。
私自身は皐月大好きです。華の美しさはもちろん、品種も多く様々な花色、花形を楽しめ、秋には葉が紅葉するのもあったり、葉の形も品種ごとに違ったり、お手入れすればするほど芽が揃っていったり、とても育てがいがあります。挿木も抜群の活着率で増やせます。
海外でもとても人気のある樹種です。
また皐月を好きな方が増えることを切に願っています。
盆栽って? 〜好きを仕事にする⑩
盆栽に通じる趣味
盆栽は樹が主役ですが、鉢も大事な存在です。
陶芸という世界はまた長い歴史、奥の深〜い世界で、もうそれだけでたくさんの書籍があります。盆栽が好きだったけど、いつの間にか鉢のコレクターになってる方もたくさんいます。
人気有名作家の鉢になると偽物まであるから、厄介で、オークションとかで買う場合は気をつけてくださいね。販売している方も知らずに売っていることもあるし、相場よりかなり安い場合は怪しいことが多いです。よほど目利きに自信がある方はいいですが、心配な方は信頼できる方や店から購入する方が安心です。
他に石も人気です。水石(すいせき)と呼びます。好きな方は一日中、石見てます。想像力で景色をイメージして楽しむ世界で、盆栽の展示会では盆栽の添えとして飾られます。水石だけの展示会も開催されています。
添えでは山野草もよく使います。その季節ごとの愛らしい山野草を盆栽と飾ることで季節を表現できます。山野草の展示会ももちろんあります。盆栽よりも女性の愛好家さんが多いかな。
掛け軸もよく使います。展示する時に季節感を出すのに使いますので、あっさりとした絵図が好まれます。滝だけとか鳥だけとか。お正月なら富士山や日の出などよく似合います。文字だけでもアリですし、自分で描いた掛け軸を使う方もいます。
花台、飾も形や高さで盆栽の雰囲気が変わるので展示会では慎重に選んでいます。盆栽の展示は空間美、総合的なバランスの美しさも評価の対象になります。
展示会に行かれる際には、こういう盆栽以外の部分もよく見てほしいですし、盆栽を好きになるとまたその先に色々な世界へ繋がっていけるのも楽しみのひとつだと思います。
盆栽って? 〜好きを仕事にする?⑨
水切れしたときの対処方
春から新しい芽がぐんぐん伸びてきましたね。
お水やりもそろそろ1日1回から2回になりつつある頃です。
誰もが一度は経験する、水切れさせちゃったよー!の対処方法をいくつかご紹介します。
残念ながら松柏は水切れさせたことにすぐに気づくことが難しいので、まずは紅葉などの雑木からお話します。
雑木を水切れさせた時、葉がしなしなに萎れるのですぐに気づくことができます。気づいたらすぐにバケツなどに水を溜めて、ドボンとその樹を浸けましょう。軽症であれば半日もすれば、元のピンとした葉に戻ります。
浸けても戻らない場合は重症です。
ついている葉をすべて切り取り、枝が伸びているときは枝も短く剪定します。勿体ないなぁと思っても、花も実も取り除いて、樹の負担を極力抑えてあげます。元気があれば、1週間ほどで新しい芽がでます。この間のお水やりは、普段のペースで構いません。過剰にあげたからといって、回復が早まるわけはないです。あと元気の無い時に肥料も与えません。水切れをすると、根が先端から痛みます。この時に肥料を与えても吸収できません。
お腹痛い時にご飯いっぱい食べさせるような感じになります。ちゃんと新しい芽が出てきてから、肥料はあげます。
枯れる理由によく根腐れと言いますが、根が詰まって痛んで葉も痛む場合と水切れなどで痛んで根腐れにつながる場合があります。結果、枯れる時は根が痛んでいるのですが、順序が違う場合があり、対処方法も異なることがあることを何となくでいいので知っていてください。
根腐れが原因の場合は、まず腐っている部分をきれいに取り除き、水はけの良い用土、鉢に植え替えます。お水やりを乾いているのを確認してからあげる、樹に根を新しく出さないとダメだよと思わすような管理をします。根が無いのに水をダブダブ与えると、なんか根を出さなくても生きてけそうと、思って新しい健全な根がでません。
植物も生き物なので、これをすれば必ず大丈夫ということはないです。頑張っても頑張っても枯れる時はあります。我々は出来るだけ治る確率を上げれるよう頑張るしかないです。
古い盆栽がなぜ価値があるのかというのも、こういう様々な困難を乗り越えて何十年と生き抜いてきたことも理由のひとつなのです。
盆栽って? 〜好きを仕事にする⑧
盆栽の置き場所とお水やり
盆栽って難しいでしょ?というイメージの元凶は、置き場所とお水やりかと思っています。
盆栽になる樹種は、日本の自然な環境で育っているものがほとんどです。なので自然な環境にあれば、あとは毎日お水やりができればほぼ大丈夫なんです。お水やりが面倒な方は盆栽園に預けるしかないです。自動換水もありますが、季節によって乾き方も違うのでずっと自動換水はやや心配です。仕事が忙しい時や旅行に行く時の補助として使うのがオススメです。
自然な環境って何?
室外で、半日は日が当たって、風通しの良い所になります。これさえ確保出来れば、元気に育ちます。エアコンの室外機の近くは気をつけてください。夏は温風、冬は冷風が盆栽に当たらないように。
でも室内で鑑賞したいですよね。最近はライトとかも販売されているので、ある程度は室内でも育てれるようになりましたが、やはり外で管理するより難易度は高くなります。(害虫は無さそう。。。)
お水やりが難しいでしょ?という事もよく聞かれます。難しく言うと、樹種によってや植え替え直後、2年目では乾き具合など異なるとか色々ありますが、初心者の方がとりあえず元気に育てるなら、お水をあげること自体は毎回たっぷりあげればいいです。2、3年もすればなんとなく乾き方の違いは分かってきます。問題はあげるタイミングです。
毎日違う時間にあげる、ムラがあるのが良くないです。朝9時と決めたら、毎日朝9時にあげるのです。樹はそれに馴染んでいきますし、乾きやすい樹は用土を保水性のある配合のものを使ったり、夏は二重鉢(一回り大きい鉢に今の鉢のまま置いて周りに用土や砂利を詰める)にしたり、自分のタイミングは維持し、他の環境で調節すると楽になります。盆栽の配合用土は、その園で使っている、その園でのベストな配合です。自分の家にとってのベストではないので、調整したらいいのです。うちの養庄園ブレンドもそうです。水はけ良すぎて困るって言われることあります。園は盆栽中心の生活で日中ずっーと盆栽見てますから、家と違って当たり前なんです。
なんか盆栽やっぱり難しそうと思うかもですが、ペットを飼う時も色々用意したり、調べたり、餌あげたり、掃除してあげたり、病院連れて行ったりしますよね。植物も生き物ですから、ある程度は準備とずっと育てるぞ!という心構えが必要です。あとの技術的なことはプロやベテラン愛好家さんがフォローします。
盆栽って? 〜好きを仕事にする⑦
盆栽界の高齢化
元々おじいちゃんの趣味なイメージがある盆栽ですが、近年いよいよ高齢化が進みすぎて色々な所でピンチを迎えております。
まず愛好会メンバーの高齢化が進み、会が維持できなくなっています。これは若い世代が会に入らないで楽しみたいという方が多いことも起因しています。まあこれは仕方ないかなと。
会に入ると良いこともあるのですが、頭ごなしに自分の盆栽の考えを押し付ける人や否定から説明が始まる人がいたり、展示会への強制的な勧誘や重たいものを持ってあげないといけない雰囲気とかありますしね。
私は二十代女子の頃から盆栽始めているので、ものすごく優しくしてもらいました。だから今、出来るだけ優しくしたいし、盆栽界に何か貢献したいなあと思っています。
先生的ポジションの方が上手くまわしているといいのですが、閉鎖的な場合はしんどくなってきて、盆栽を好きじゃなくなる方もいます。悲しい。。
あと生産者さんの高齢化も凄く、どんどん素材が減ってきています。後継者不足です。私は夢のある素敵な仕事だと思うのですが、農家さんも含め、なかなか継いでもらえないようです。
鉢も減ってきていて、困っています。常滑さえもカタログ作れないぐらい減っています。昔は分厚いカタログだったのですがね。
ハサミ✂️もです。職人さんが減っているそうです。日本の刃物の技術は素晴らしいのですが、こちらも後継者不足です。
盆栽園自体は結構、後継ぎがいたり、新規も増えてるので今のところは絶滅危惧種ではないです。お陰様で毎日忙しいです。
盆栽普及を頑張って、鉢もハサミも日本の技術の素晴らしさを知ってもらいたいと思います。